19歳のときに、はじめて能を観ました。はじめて観た能は、奈良興福寺の薪能でした。薪のあかりに照らされて、あやしいようなこわいような静寂に、美しさを観じました。刺激的で幻想的で、別世界にいるような気がしました。

およそ600年前に成立した日本の能は、世界で一番古い舞台芸術です。世界に誇る芸能、能を確立したのが世阿弥(ぜあみ)です。

優れた能楽師であった世阿弥の父、観阿弥(かんあみ)が、世阿弥に教えたことを書き残したのが「風姿花伝」です。芸能についての教えをを伝えていますが、私たちの生き方をも示してくれています。

そもそも芸能とは、人々の心を和らげて、感動をもよおさせること。それが、人生を豊かにし、寿命を延ばすことである…と世阿弥は「風姿花伝」に残しています。

芸をする者は、人々の心を和らげ、人生を豊かにするというこの使命のために、日々精進しなければいけません。言葉を発する者にも、同じような責任と使命があると想います。そのために、人が本来もっているはずの品と華を保ち、さらに磨くべきだと想います。

下品なことをすれば、品は落ち、戻すのに時間がかかります。華を咲かせても、ほおっておくと、枯れてしまいます。品を磨き、華を咲かせ続けためには、日々精進です。 限界無く、際限なく、とことん自分をこえていくこと、自分を磨くことに挑戦したいですね。楽しいことです、きっと。品と華、極めたいものです♪

(2011.01.11)